旅屋おかえり 【感想】

小説

作者は原田マハさん。小説家で美術に造詣もあり、ヒット作を連発する著名作家です。

映像化した作品には『総理の夫』や『本日はお日柄も、良く』などがあり、ご存じの方も多いのではないでしょうか?

という私もこの方の作品は大好きで特に『生きるぼくら』という日本伝統のお米つくりと青年の再生ストーリーを描いたこの作品は涙をにじませながら何度も本を読み返しました(笑)

そして『生きるぼくら』と同じくらい大好きで読み返したのが今回紹介する作品『旅屋おかえり』です。

タイトルだけ見れば旅をテーマにした作品というのは分かりますが、旅屋とは?聞き覚えのない仕事で興味を惹かれます。

旅というのは昔から人々の憧れでもありますよね。

見たことのない景色、初めて味わうことになる食べ物、旅先で出会う人たちと触れ合うことで新たな価値観を知るなど、五感すべてに刺激を与えることができます。

興奮を覚えながらも己の知らぬ土地という不安や寂しさも感じてしまう……旅というのは自分を成長させることにもつながるのではないでしょうか?

しかし、この本を読破して旅というのは新しいものに触れるだけでなく、自分のこれまでの人生、現在の立ち位置を改めて再確認するものではないかと思えるようになりました。

旅をするということはすなわちいずれは帰るべき場所に帰るということ……ぜひ皆さんにもおすすめしたく記事にしました!

あらすじ

主人公である丘えりこ、愛称“おかえり”はある旅番組の看板として活躍するタレント。

旅や“おかえり”を好む人たちからは根強い人気がある番組だったが、とある失言からスポンサーを怒らせてしまい、番組は打ち切りとなってしまいます。

レギュラーとして出演している番組はそれ一本という状況であり、所属する芸能事務所は苦境に立たされます。

旅をこよなく愛する“おかえり”は旅をこれ以上続けることができない悲しみと今後仕事がなくなるという不安を抱えることとなり、事務所の社長“萬鉄壁”や事務の“澄川のんの”と途方に暮れることとなるが…

ふとしたきっかけから旅屋なる仕事を始めることとなりました。

旅屋というのは様々な事情から旅をすることができなくなった依頼人から依頼を受け、タレントである“おかえり”が代わりに旅を行うというもの。

様々な依頼人と接して、笑顔あふれる形で仕事を遂行する中で主人公である“おかえり”や事務所の仲間たちも自分の過去と向き合っていくこととなるのです。

旅屋とはなんぞや?

私もあらすじを見たときは旅屋?と頭にクエスチョンマークが浮かびました。

この小説にある旅屋というのは依頼人のお願いを受けて、指定された地へ旅行を行っていくというお仕事です。

旅というのは自分が見たり、聞いたり、触れたりと体感しないと意味がないのではと思っていました。

そりゃ土産話という言葉があるぐらいですから、誰かの旅の話を聞くだけでも楽しいのは分かりますが所詮は他人事。

小説を読む前はどうやって話を広げるのだろうと楽しみになった記憶があります。

依頼人達は様々な事情があり、行きたい場所へ旅をすることができず主人公である“おかえり”に旅を代行することとなります。

旅を題材にする小説やノンフィクションは数多いが、仕事で旅を代行するなんてこと、聞いたのは初めてです(笑)

主人公と旅先で出会う魅力的な登場人物について

話の全体としては非常にコミカルに進んでいきます。

主人公が所属する芸能事務所は所帯3人という少数の事務所ですが、皆が長い付き合いのある気心がしれた仲ですので、会話がリズミカルで思わず笑みがこぼれてしまうようなやり取りが続きます。

だからこそ、シリアスな場面ではそのギャップにドキドキしてしまい、感動的な場面へと繋がっていくのでしょう。

登場人物としてはやはり主人公が非常に魅力的ですね。

主人公である“おかえり”は旅をこよなく愛しており、急な旅屋という仕事でも一生懸命取り組み、時には暴走することもありますがそれは間違いなく誰かのためであり、読んでて応援したくなります。

周りの皆からも愛されている理由がよくわかる、そんな主人公だったと思います。

同じ芸能事務所の仲間たち、旅先で出会う人々も色んな事情や後悔を抱えていますが、それでもひたむきに頑張る人達ばかりで登場人物全員に好感を覚えることでしょう。

小説にありがちな嫌なキャラというのがこの本にはなく、それも凄いなと思えました。

優しさに溢れた小説といっても過言ではないでしょう(笑)

感想

正直に申します!読み始めたら最後、あっという間に物語に引き込まれてしまい、涙をにじませながら読み進めていました!

旅屋へ依頼する依頼人たちは皆、後悔があり自分の気持ちを前に進めることができずにいました。

旅屋への依頼を通して皆が笑顔になる場面は涙がにじむこと間違いないでしょう。

主人公が旅の途中で出会う人たちも皆が魅力的で、こんな素晴らしい出会いができるなんて旅というのは本当に素敵だと実感してしまいます。

しかしそれだけでなく、旅というのは外側から見た自分を改めて見つめなおし、原点に立ち返ることも出来るかもしれません。

この作品のテーマとしてはもちろん旅の素晴らしさということになるのでしょうが、家族愛というのも深く感じることができました。

家族と一緒に旅をする。帰ってくる場所に家族がいるからこそ旅ができる。その素晴らしさをこの本で教えてくれ、身近な人たちの大事さにも気づかせてくれます。

私も読後は無性に旅に出たくなってしまいました。

憂鬱な仕事などすべてほっぽりだし、見知らぬ地でゆっくりと。

まぁ、人見知りでコミュニケーション能力が著しく低い私にとっては旅先で出会う人たちと交流するというのはかなりハードルが高いようですが…(笑)

いつかこの本のような旅をしてみたいと心から思えました。

以上、紙魚丸でした!

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